「守破離(しゅはり)」を聞いたことがあるだろうか。

先日の記事に書いた「断捨離(だんしゃり)」と言葉はよく似ているが、意味は全く違う。

これは茶道や武道、芸術など様々な世界において、スキルの段階を示したものである。

 

例えば、将来は自分でイタリアンの店を持つ夢があるコックの見習いがいるとしよう。

コックになるためには、まずはレストランなどで働くのが一般的である。

何の知識もなく調理の経験もなく、いきなり店を構える人などいない。

レストランで働いていると、実際に店での作業や料理の経験をすることができる。

当然だが、そのレストランではそこの店主(師匠)のやり方がベースになるので、これに従う必要がある。

いわゆるこれが、「守(しゅ)」の段階だ。

自分の師匠に当たる人の教えを「守って」スキルを身につけていくのだ。

 

この時、注意しなければならないことがある。

まだこの時は、師匠の教えを「守る」段階なので、勝手なことをしてはいけないのだ。

よく物事の導入部分を知っただけで、「なるほどわかった!楽勝、楽勝!」と言って、基本を飛ばしながらやる人がいるが、こういう人に限って失敗する。

師匠のやり方を完全コピーできるまで、しっかりとマネをして何度も練習するのが鉄則だ。

 

こうして師匠のスキルが「完コピ」できると、おもむろに師匠は言ってくる。

「お前も将来、自分の店を持ちたいのなら、いつまでもオレのマネばかりしててもダメだぞ」

これを言われたら、とりあえず基本はマスターしたという証拠だろう。

もしこういう事を師匠に言われなくても、怒られなくなったとか、ほとんどの仕事を任されてチェックもされない状態になっていれば、基本はマスターしていると判断していいだろう。

 

「守」ができると次は、「破(は)」の段階になる。

名前の通り、「基本を破る」ということだ。

これは何もいきなり好き勝手やるという事ではなく、基本を守りながら少し手を加えたり、アレンジしたりする事である。

料理の世界であれば、師匠の味を守りつつ、調味料を少し変えてみたり材料を一つ加えてみたりして、自分の色を少しずつ出していくような感じだ。

もちろん急に大きく手を加えると、「勝手な事をするな!」と師匠を怒らせてしまう可能性があるので、少しずつやるのがコツである。

「まぁ、それぐらいなら許してやる」と師匠が半笑いで見逃してくれる程度にしておくのがポイントだ。

 

最後は「離(り)」だ。

これも名前の通り、師匠の元を離れるということだ。

基本をマスターし、アレンジができるようになって、晴れて独立という段階だ。

この段階に来れば自分の店を持ち、店主となっていることだろう。

夢がかなった瞬間でもある。

この先は自分のオリジナルの道をどんどん突き進んでいけばいいのだ。

 

この守破離は、多くの業界で見ることができる。

自分でこれからビジネスを始めるにしても、この「型」に従うのが成功の近道と言えるだろう。

誰もやっていない全くオリジナルのビジネスを始めるから、守破離は必要ない!と思う人もいるかもしれない。

だが、今の世の中、何の前例もないビジネスを考える方が難しいのではないだろうか。

扱う商品やサービスが完全オリジナルというのは多くあるだろうが、ビジネスの基本は「集客」と「販売」だ。

 

●どうやってお客を集めるか。

●どうやってお客に商品を売るか。

 

起業してこれからビジネスをする人は、まずこの基本原則を成功者に学ぶことから始める必要があるだろう。

私もまだまだルーキー起業家の身なので、メンターに「守」を教えて頂いているところだ。