私は人と比べると思っていることを素直に言ってしまうタイプである。
言いにくいことを遠まわしに言わず、言いにくかったら一切言わないし、言う必要があれば直球で言う。
だがそうなったのは、10年前のある日がきっかけだった。
以前、会社では月イチで会議があった。
それは各部署の売り上げを担当者が報告する会議なのだが、この会議が私は大嫌いだった。
売り上げが達成していれば数字だけを発表して終わりなのだが、未達成であれば会議を仕切っている部長がその原因を根ほり葉ほり聞いてくる。
会社なんてのは「結果主義」であるところが多いから、未達成の理由を聞いてくるのは自然な事であると思う。
部長が未達成理由を追求してくることは当然だと思うし、それについては何とも思わなかった。
では何が嫌いだったかというと、未達成の時の各部署の担当者の言い訳だ。
「今回は客足が伸びず、、、新人もまだ慣れていないので、、、思うようにできず、、、」
「達成予定でしたが、、、見積額が少し違っていて、、、多めに計算してしまっていて、、、」
「新商品の開発に力を入れており、、、販売の方が少しおろそかになっていたと思われ、、、」
こういう感じで各担当者はビクビクしながら、昨夜に考えたであろう言い訳を発表していくのだ。
この言い訳が嫌いだったのだが、実は私も会議に出始めた最初の頃は、未達成を報告しなければならない前日の夜に未達成の言い訳を考えていた。
ある会議の日、東京支店に異動した私の元上司が出席していた。
話を聞くとある担当者が出張のため、代理で来たようだった。ちなみに今回その部署は未達成だった。
その上司は知識、スキル、人脈など全てにおいてぶっちぎりの社内で最もできる人だった。
私も尊敬していたその元上司が、どんな未達成の言い訳をするのか少し楽しみだった。
元上司の発表になった。
「今回は未達成、申し訳ありません。次回巻き返します。以上。」
それだけだった。理由を言わない未達成報告に会議室は少しざわついた。
「未達成の理由は何かね?言いたまえ!」部長は少し不機嫌そうに言った。すると、
「達成に向けての施策は全てやって未達成です。なので未達成理由は述べることができません。それがわかっていれば達成しています。次回に向けて考えている施策であれば述べることができますが。」
部長はそれに対して、何も言わなかった。
会議が終わって私は元上司の所へ駆け寄った。
「もうかっこ良すぎですね!僕も次回からマネします!」と言うと元上司は、
「やるべき施策を全てやった上で未達成であれば、そう言えばいいだけだ。やるべき事をやらずに言い訳を言ったり、未達成に理由はないなどと言うんじゃないぞ。」
と言われ、ますます元上司をリスペクトすることになった。
10年前のことだ。
あれから10年経ちその元上司は会社を去り、起業した会社で成功しているようだった。
私が起業した理由には、元上司への憧れが多少あったような気がする。
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