今は独立して個人事業で仕事をしているので、誰かに物を教えることもなくなり、怒ることもなくなった。

まだそんなに時間は経っていないがサラリーマン時代を思い返せば、私は怒って指導するタイプの人間だった。

最近は「今の発言、パワハラですよ。訴えますよ」みたいな事を平気で言ってくる若者がいるので、上司や先輩たちも怒らずに言葉を選んで指導していたようだが、私は何度言ってもできない後輩には怒って教育していた。

おかげで、半分ぐらいの人間からは嫌われていた気がするが (笑)

 

 

その昔、ある先輩が私の同期の女の子に現場で指導していた。

その先輩もしっかり怒って指導するタイプの人間だったので、強い口調でその女の子を指導していた。

「前も言ったよな!必ず手順通りにやれって!何でやらねーんだっ!」

黙り込む同期。やられてるなーと思いながら、遠くからその光景を見ていた。

「オレがお前ぐらいの頃は、こんな作業5分で終わらせたもんよ!」

よく聞くセリフである。5分というのは少し盛ってる気がするが、まぁそれぐらいの大したことない仕事だった。

すると女の子は先輩にこう言った。

「先輩はいつも仕事のやり方は説明してくれますが、実際にやって見せてはくれませんよね?本当にできるんですか?」

オイオイオイ、、、言うなぁーあいつと思って見ていると、

「…‥できるに決まってるだろ‥‥‥お前、誰に言ってるんだ‥…?」

先輩の怒った顔は健在だったが、声のトーンが落ち、明らかに自信なさげな声になった。

同期の女の子はピンと来たようで、

「じゃあ先輩!やって見せて下さい!!私も先輩が実際に作業をする所を見れば、しっかり覚えられると思うので!」

こうして先輩は、その気の強い私の同期の女の子に作業手本を見せることとなった。

 

 

「‥‥まぁ、、こんな感じだ。久しぶりにやったから、、ちょっと時間がかかったが、、」

20分後、先輩のお手本作業は何とか終わった。久しぶりとは言え、20分はかかり過ぎだ。

おまけに仕上がった状態も結構ヒドかった。

「ありがとうございました!(ニヤニヤ)先輩も久しぶりの作業で苦戦してましたねぇ〜(ニヤニヤ)」

その日以来、同期の女の子は先輩を明らかに下に見るようになった。

「人にやれと言うだけで、お前ができてねーじゃん!」と確実に思っていることだろう。

先輩の名誉挽回には時間がかかりそうだ。

 

 

個人事業主で仕事をする人間は、最初から外注ばかりに頼らずに、何でも自分でやってみる精神が大切だと思う。

効率アップのため経営者は作業を自分でやらずに、お金をかけて外注せよと書いてあるビジネス書が多くあるが、外注する前に一度自分でやってみる事は重要なことだ。最悪の場合、個人事業主は自分で何とかしないといけないのだ。

何でも経験し、できるようになることが大切だ。